インナーガレージとは?間取りの決め方や固定資産税、後悔しないポイント

インナーガレージ

家の中に駐車スペースを組み込んだ「インナーガレージ」は、暮らしの利便性を高める間取りの一つです。

「狭小地でも駐車スペースは欲しい」「駐車場から玄関まで雨に濡れずに行きたい」とお考えの方にとって、インナーガレージは魅力的な選択肢となります。

一方で、費用や家の階数が増えることによる移動負担がネックだと感じる方は多いかもしれません。

そこで本記事では、インナーガレージのメリット・デメリットをまとめました。後悔しない間取りの決め方や固定資産税についても解説するので、インナーガレージを検討中の方はぜひ最後までお読みください。

目次

インナーガレージとは

インナーガレージとは、住宅の一部に駐車スペースを組み込んだ設計のことです。

従来の日本の住宅は、建物と駐車スペースは別に設計されることがほとんどでした。しかし近年は、利便性を向上させる目的でインナーガレージを採用する人が増えています。

インナーガレージのある家(インナーガレージハウス)は、狭小地など利用できる土地が限られている都市部を中心に人気を集めています。

駐車スペース以外の活用方法もあり、多様化するライフスタイルに柔軟に対応できる間取りだと言えるでしょう。

インナーガレージとビルトインガレージの違い

インナーガレージとビルトインガレージは、どちらも建物内に設置されたガレージを指す言葉です。

基本的に意味は同じですが、ハウスメーカーや地域によって呼称が異なる場合があります。住宅とガレージが一体化した建物のことを総称して「ガレージハウス」と呼びます。

インナーガレージのメリット

インナーガレージには次の6つのメリットがあります。

  1. 雨風や雪から車を守れる
  2. 悪天候でも濡れずに外出できる
  3. 狭小地でもガレージをつくれる
  4. 防犯効果がある
  5. リビングの日当たりが良くなる
  6. 趣味スペースとして活用できる

ここからはそれぞれのメリットを詳しく解説します。

1.雨風や雪から車を守れる

インナーガレージには、雨風や雪などから車を守れるメリットがあります。

露天の駐車は雨風によって車体が汚れるだけでなく、積雪や凍結、紫外線による塗装の劣化などの問題が避けられません。

インナーガレージであれば、天候による外的要因から車を守り、車を長期間良好な状態で保つことができます。車内の温度も安定しやすいため、日差しの強い日や寒さが厳しい日でも空調の効果を早く安定させられます。

結果として、メンテナンス費用やガソリン代の削減につながる点は、インナーガレージの大きな魅力だと言えるでしょう。

2.悪天候でも濡れずに外出できる

インナーガレージがあれば、雨や雪の日でも濡れることなく車に乗り込むことができます。

通常、インナーガレージがある家は玄関や室内から直接ガレージにアクセスできる設計が多いです。買い物袋や重い荷物を持っている場合も、最短ルートで家の中に荷物を運べます。

天候に左右されない上に、外出時や買い物帰りの負担が少なく済む点は、小さなお子さんや高齢の家族と住む方にとって大きな利点となるでしょう。

3.狭小地でもガレージをつくれる

インナーガレージは、都市部や狭小地など限られたスペースに駐車場を設置したい場合におすすめの設計です。

1階部分をガレージに、2階以上を居住空間とする間取りはスペースの有効活用の好例です。住宅とは別に駐車スペースを設置する必要がないため、土地全体のデザインにも統一感が生まれます。

狭い土地でも十分な駐車スペースを確保することは、生活の利便性向上につながります。

4.防犯効果がある

インナーガレージは防犯の面でも大きな役割を担います。

露天の駐車場は盗難やいたずらのリスクがありますが、インナーガレージに駐車すれば外からの視線を遮ることができます。シャッター付きであれば、より高い防犯効果が期待できるでしょう。

インナーガレージは物置としての用途も兼ね備えるため、自転車やアウトドア用品などの収納にも最適です。庭先に置きっぱなしにしたくない高価なものも、インナーガレージに収納することで盗難防止に役立ちます。

5.リビングの日当たりが良くなる

インナーガレージを採用する場合、リビングは2階に設計するケースが多いです。

リビングは暮らしの中心となる空間であるため、家づくりにおいては日当たりの良さが重視されます。インナーガレージをつくることでリビングが2階になれば、その分採光を取りやすくなります。

日当たりの良いリビングは、暮らしの快適性を高めるだけでなく、エネルギーコストの削減にも有用です。

6.趣味スペースとして活用できる

インナーガレージは、趣味や作業スペースとしても活用できる多機能な空間です。

バイクの整備やDIY、キャンプ用品のメンテナンスなど、趣味を楽しむ場所として最適です。工具やスポーツ用品などの収納スペースとしても活用できるので、大きく汚れやすいものを家の中に持ち込まずに済みます。

また、自分だけの隠れ家的な空間としてカスタマイズすれば、リフレッシュスペースとしての役割も担います。単なるガレージではなく、無限の可能性を秘めた空間となりうるのです。

インナーガレージのデメリット

インナーガレージにはデメリットとなりうる側面もあります。

  1. 上下の移動が増える
  2. 費用が高くなりやすい
  3. 工法・構法が制限されることがある

ここからはそれぞれのデメリットを詳しく見ていきましょう。

1.上下の移動が増える

インナーガレージを1階に、居住スペースを2階以上にする間取りでは、必然的に上下の移動が増えます。

小さな子どもや高齢の家族との暮らしでは、この移動による負担がネックになります。買い物袋や洗濯物など、重い荷物を上下に運ぶ生活動線は人によってストレスに感じるかもしれません。

この問題は基本の居住スペースを1階にすることで解消できますが、狭小地での実現が難しい・費用が高額になるといった別の問題も発生します。

インナーガレージを検討する場合は、ライフステージの変化を見据えた間取りを計画することが大切です。

2.費用が高くなりやすい

インナーガレージのある家は、そうでない住宅に比べて建築費用が高くなる傾向があります。

その理由は、ガレージを住宅本体の一部として設計・施工する必要があるからです。耐久性や防水性を高める施工に加えて、シャッターや電動ドアなどの設置によってコストは高くなります。

加えて、床面積に占めるガレージ部分の割合が高くなると、固定資産税が増えるという別の問題も発生します。

マイホーム計画では、インナーガレージの費用対効果を十分に検討し、その利便性と長期的なメンテナンス費用を含めたトータルコストを考慮しましょう。

3.工法・構法が制限されることがある

インナーガレージは、ガレージ部分に大きな開口部を設ける必要があることから、木造住宅では耐震性を確保するための補強が求められます。

設計においては、細かい壁量計算や偏心率(耐力のバランス)計算が必要です。土地の形状や面積、地盤の強度によっては、インナーガレージを含む設計が適さない場合もあります。

条件次第では制約が増え、理想の間取りを実現できない可能性もあるでしょう。また、ハウスメーカーにも高い設計力や技術力が求められるので、業者選びもより一層慎重に行わなければなりません。

インナーガレージの間取りの決め方

家の模型と図面

インナーガレージハウスの設計では、大前提としてガレージスペースを最優先に考えましょう。

どのような車を何台駐車するのか、駐車スペース以外の用途も求めるのかによって必要な面積は異なります。車の乗り降りがしにくい、収納スペースが不十分だったという後悔は、住みはじめてから大きなストレスとなってしまいます。

もう一つ、インナーガレージの設計ではガレージと住居部分との動線を考えることも大切です。玄関やキッチン、収納スペースへのアクセスがスムーズであれば、荷物の運搬が楽になります。

​​インナーガレージは、家全体の間取りに影響を与える重要な要素です。暮らしやすさと機能性を両立した設計を目指し、家族全員が満足できる間取りを検討しましょう。

インナーガレージで後悔しないためのポイント

インナーガレージのある家づくりで後悔を防ぐには、以下の4つのポイントを慎重に考える必要があります。

  1. ガレージのサイズ
  2. 騒音・排気ガス対策
  3. シャッターの種類
  4. 生活動線

ここからはそれぞれのポイントを詳しく解説します。

1.ガレージのサイズ

ガレージの広さを決める際は、車のサイズと合わせてドアの開閉や荷物の積み降ろしに必要なスペースも考慮しましょう。

1台分の駐車スペースを設置する場合は、最低でも幅2.5メートル×奥行き5メートル以上のスペースが必要です。SUVやワゴン車はさらに広いスペースが必要となります。

車種の変更や2台目を所有する予定がある場合は、スペースに余裕を持った設計にすることをおすすめします。

2.騒音・排気ガス対策

家に駐車スペースが組み込まれたインナーガレージは、騒音や排気ガス対策が必須です。

騒音対策は防音仕様のドアや壁材を採用したり、静音性の高いシャッターを選ぶ方法が有効です。早朝や深夜に車を出し入れするご家庭は、寝室とガレージを離した間取りを検討しましょう。

排気ガスが室内に侵入するのを防ぐには、ガレージ内に換気扇や通気口、窓を設置するのがおすすめです。ガレージに通じる部屋に窓を設置する場合は、気密性が高いものを採用することも排気ガス対策に一定の効果を示します。

3.シャッターの種類

インナーガレージに設置するシャッターは、電動タイプが圧倒的に便利です。

リモコン操作一つでシャッターを開閉できるので、雨の日や荷物が多い日もスムーズな移動が可能です。手動の方がコストは安く抑えられますが、後悔しないという点では電動の利便性に敵うものはありません。

また、断熱性や防犯性の観点で見ると、シャッターはアルミやスチール製のものがおすすめです。色とデザインなどにもこだわりつつ、住宅全体で統一感のある仕上がりを目指しましょう。

4.生活動線

インナーガレージを採用する場合は、ガレージと居住空間の動線を慎重に考えることが大切です。

ガレージからキッチン、パントリーへのアクセスがいいと、買い物した荷物を運ぶ労力を軽減できます。ライフスタイルによっては、家族が集まるリビングへの動線がスムーズだと、家全体の使いやすさが向上します。

暮らしの快適性を高めるためにも、インナーガレージは設計時点で生活動線をしっかりと考えることを意識しましょう。

インナーガレージの建築費用

家の設計図と電卓と虫眼鏡

インナーガレージの建築費用は、一般的な住宅に比べて高くなる傾向があります。

坪単価で見ると50〜80万円が相場で、車1台分のスペースを確保するのに200〜480万円程度かかる計算です。単純計算で車2台分なら400〜960万円、3台分なら600〜1,440万円ほどかかると想定できるでしょう。

インナーガレージハウスの建築には、耐久性や防水性を確保するための構造強化や、シャッター・換気設備の設置といった特殊な設計や施工が求められます。

また、建物全体の設計が複雑になる場合があるので、カーポートを設置したり土間コンクリートの駐車場を造るよりも費用は高額になると言われています。

一方で、土地代が抑えられる点や、車の保護によるメンテナンス費用の削減といったメリットがあるのも事実です。

家づくりにかかる費用は、エリアや依頼するハウスメーカーによっても異なります。インナーガレージの施工でどれくらい費用がかかるかは、依頼するハウスメーカーや工務店に確認するのがいいでしょう。

インナーガレージの固定資産税

インナーガレージは、固定資産税がかかるものとかからないものに分類されます。

両者を分ける基準は「外気分断性」「定着性」「用途性」の3つの条件です。

外気分断性屋根や壁で3方向以上が囲まれている状態のこと
定着性建物が土地に固定されていること
用途性建物が特定の目的や用途を有している状態のこと

上記の条件を満たしているインナーガレージは、固定資産税の課税対象になります。反対に、周壁がないカーポートや基礎のないパイプ車庫には固定資産税はかかりません。

この理屈で考えると、住宅の一部として組み込まれるインナーガレージの大半は固定資産税がかかると言えるでしょう。

固定資産税は「固定資産税の評価額×税率」で計算します。税率は自治体によって異なりますが、ここでは1.4%で計算します。

新築住宅の固定資産税評価額の目安は建築費の60%程度なので、インナーガレージの建築に300万円かかったとすると、固定資産税は25,200円になる計算です。

固定資産税の計算例

300万円×60%=180万円180万円×1.4%=25,200円

インナーガレージの建ぺい率・容積率への影響

建築基準法では、敷地面積に対する建築面積の割合を表した「建ぺい率」が定められています。

建ぺい率はその土地に建てられる建物の大きさの上限を示したもので、建物を上から見た時の最大面積で表します。柱と屋根があるインナーガレージは建築物としてみなされるので、建ぺい率はインナーガレージを含んだ面積で計算されます。

容積率については、家の延べ床面積の5分の1まで除外できるという緩和措置によって計算に含めなくてもよい場合があります。延べ床面積の上限を超えないビルトインガレージであれば、居住スペースを削らない家づくりが可能です。

インナーガレージにまつわる質問

家の模型とはてなマーク

最後に、インナーガレージについて多く寄せられる質問と回答をご紹介します。

Q.平屋にインナーガレージはつくれますか?

つくれます。

平屋の場合はガレージが占める面積が大きくなるため、居住スペースが狭くなる点に注意が必要です。(十分な土地があれば問題はありません)

Q.インナーガレージは後付けできますか?

建物の構造や敷地条件によります。

建物の一部をガレージに改装する場合は、耐震性や断熱性の確保が必要です。また、固定資産税や建ぺい率・容積率への影響も考慮しなければなりません。

後付けが可能かどうかは、建築士や施工業者に確認することをおすすめします。

Q.インナーガレージは虫が出やすいですか?

インナーガレージは外部とつながる部分があるため、虫が侵入することがあります。

虫の侵入を防ぐには、シャッターや通気口などに隙間対策を施したり、虫除けネットを設置するなどの方法が有効です。

インナーガレージで快適な暮らしの可能性を広げよう

インナーガレージは、生活の利便性や快適性を高める大きな魅力を持っています。

費用面や移動負担、施工の制限などデメリットとなりうる要素もありますが、住む人の暮らしに合う設計ができればメリットの大きい間取りであると言えるでしょう。

本記事では、インナーガレージのメリット・デメリットや間取りの決め方、費用全般について詳しく解説しました。インナーガレージを検討中の方は、家族のライフスタイルや将来の使い方を見据え、最適な間取りを考えてみてくださいね。

この記事の監修者

小山田

小山田 剛

一級建築士事務所CoboLabo代表。 一級建築士兼、管理建築士。お客様のご予算帯に合わせた最適な建築・インテリア設計の提案を得意としている。

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この記事を書いた人

フリーランスとして活動するエクステリアプランナー。
2級エクステリアプランナー・インテリアコーディネータ―の資格所有。
住宅の外観から内装デザインまでを得意としており、自身の住宅デザインも手掛けている。

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