近年の住宅トレンドの一つが、リビング空間に階段を設置する間取り(リビング階段)です。
リビング階段は家族間のつながりを感じやすく、空間を洗練されたイメージに見せてくれるのが大きなメリットです。一方で、室温管理やプライバシーの確保など、生活する上で配慮しなければならないポイントもあります。
「リビング階段の画像や間取りが見たい」
「失敗や後悔を防ぐコツはある?」
家づくりでリビング階段を検討中の方のため、本記事ではリビング階段のメリット・デメリットをご紹介します。おしゃれな参考事例と設計時の注意点も解説するので、間取りでお悩みの方はぜひ参考にしてください。
リビング階段とは?

リビング階段とは、家のメイン空間であるリビングルームに設置された階段、またはそのような間取りを指します。
この設計は「リビングイン階段」とも呼ばれ、上階に行くには必ずリビングを経由しなければいけないという特徴があります。
かつて日本の一般住宅は、玄関ホールや廊下に階段がある間取りが一般的でした。その後日本人のライフスタイルや住宅トレンドの変化によって、リビングに階段を設置する間取りが注目されるようになりました。
リビング階段には、家の内部をつなぐ機能的な役割を超えて、空間の開放感を生み出したり、住まい全体のデザイン性を高めたりする目的があります。
リビング階段のメリット

リビング階段のメリットには次のものがあります。
- 家族間のコミュニケーションが増える
- スペースが節約できる
- 吹き抜けとの相性がいい
- おしゃれに見える
- 階段下スペースの用途が広がる
ここからはそれぞれのメリットを詳しく解説していきます。
1.家族間のコミュニケーションが増える
リビング階段のある家では、玄関から上階へ行くのに必ずリビングを経由します。
リビングは家族が集う家のメイン空間であり、そこを経由する機会が増えるとなれば必然的に家族間のコミュニケーションも増えます。
子どもが学校から帰って、まず家族と話をする。親は子どもの様子を見て、小さな変化にも気づいてあげられる。この習慣があることで、家族同士の関係性はずっと深まっていくはずです。
2.スペースが節約できる
玄関ホールや廊下に階段を設置する間取りに比べて、リビング階段はスペースの節約にも有用です。
スペースの有効活用はコストダウンにつながります。節約したスペースは収納など別の用途に使えるので、より快適で機能性の高い家づくりに役立ちます。
3.吹き抜けとの相性がいい
リビング階段は吹き抜けとの相性が良く、開放感や洗練された空間を演出することができます。
同じ畳数でも吹き抜けがあるとないとでは、見た目の印象がまったく異なります。吹き抜けとスケルトン階段の組み合わせは圧迫感も大幅に軽減できるので、窮屈な印象はほとんど感じることはありません。
リビングを広く見せたい場合は、リビング階段と吹き抜けの両方を採用するのも一つの方法ですよ。
4.おしゃれに見える
リビングに設置される階段は、デザイン次第でインテリアの一部として捉えることができます。
階段は「家の中に組み込まれる構造物」であり、設置するとなるとある程度の大きさとスペースを確保しなければなりません。上下階を行き来するのに必要なものではありますが、せっかく設置するのであれば見た目にもこだわりたいところです。
リビングに階段を設置する場合、圧迫感を軽減するためにスケルトン階段※を採用するケースが多いです。(※骨組みと段板のみで構成される階段のこと)
玄関ホールや廊下などにある従来の階段は、機能性が重視されデザイン性を求めるのが難しい部分がありました。対して、スケルトン階段のあるリビングはそれがあるだけでおしゃれな印象に見せられる強みがあるのです。
5.階段下スペースの用途が広がる
リビングに階段のある間取りは階段下にスペースが生まれます。
従来の階段下は、収納以外の使い方を見つけるのが難しい側面がありました。しかし、リビング階段の下はリビング空間の一部として活用できるので、収納以外にもさまざまな使い道が考えられます。
6.生活動線がいい
住まいの中心的空間であるリビングに階段があると、生活や家事動線も向上します。
リビングが起点となるため、トイレやお風呂、個室、玄関など各部屋への移動距離が短縮できます。家の中を楽に移動できる点は、小さな子どもや高齢者と暮らす人にとって大きなメリットとなるでしょう。
リビング階段のデメリット

リビング階段にはさまざまなメリットがある一方で、以下の点に注意が必要です。
- 寒さ対策をしなければならない
- こまめな掃除が必要
- 音や匂いが気になることがある
- プライバシー性が低くなる
ここからはそれぞれのデメリットを詳しく解説していきます。
1.寒さ対策をしなければならない
リビング階段を採用する上で、多くの方が心配するポイントの一つが部屋の寒さです。
リビングから2階までがひと繋ぎの空間になると、冷暖房効率が低下しやすくなります。冷気は低い場所へ向かっていくので、リビング階段を採用する場合はリビングの寒さ対策が必須です。
断熱性能の向上や全館空調の標準仕様などにより、近年の新築住宅では寒さ対策はそれほど困難ではありません。とはいえ、万全な対策を講じる必要はあるので、設計士やハウスメーカーに相談しながら快適性を保つ工夫を取り入れることをおすすめします。
2.こまめな掃除が必要
ホコリは角にたまりやすい性質があるため、階段のような角の多い場所はホコリが目立ちます。
掃除が必要なのはリビング階段に限った話ではありませんが、リビングという人目につきやすい場所は清潔に保たれているのが理想的です。
スケルトン階段であれば段板からホコリが舞い落ちることも想定されるので、階段下も含めリビングはこまめに掃除をした方がいいかもしれません。
3.音や匂いが気になることがある
リビング階段はその開放的な設計から、下の階の生活音や料理のニオイなどが上の階にも伝わりやすくなります。
例えば、2階で子どもたちが眠った後に1階リビングで映画鑑賞をしようとすると、睡眠の邪魔をしないようボリュームには配慮が必要です。
料理のニオイは食事開始のサインだと前向きに捉えることもできますが、体調不良で休んでいる時には多少気になることがあるかもしれません。
音やニオイによるストレスを軽減するには、ドアや床、壁の防音対策や間取りの工夫、キッチンの換気扇の性能にこだわるなどの方法が有効です。
4.プライバシー性が低くなる
リビング階段のある家では、2階に行くために必ずリビングを通らなければなりません。
思春期の子どもは、家族とお友達が顔を合わせることに抵抗を感じることが多いです。相手がボーイフレンド・ガールフレンドといった関係であれば尚のことでしょう。
家族としても、ゲストの滞在中はリビングで完全にはくつろげないという気疲れがあるかもしれません。玄関ホールや廊下に階段がある間取りに比べると、プライバシー性が低くなってしまう点はあらかじめイメージしておく必要があります。
リビング階段の間取り事例5選【画像あり】
リビング階段を検討している方のため、ここからは実際の事例をご紹介します。
機能性と見た目の両方にこだわり、快適性も保たれている事例ばかりなので、家づくりの参考にご覧ください。
事例1.モダンでハイセンスなリビングにおしゃれな階段が絶妙にマッチ
リビング階段と吹き抜けを組み合わせた間取り。2階との繋がりは感じつつ、プライバシーにもしっかりと配慮された事例です。
モデルルームのようにセンスよくコーディネートされた空間は、ゲストに褒められること間違いなしです。(引用元:@myhousegram111|Instagram)
事例2.明るく開放感溢れる空間で気持ちのよい時間を過ごす

高窓と掃き出し窓からやわらかな日差しが差し込むリビング。ホワイト&ナチュラルでコーディネートされた空間には癒しの雰囲気が漂います。
階段下はおもちゃを収納するスペースに。子どもの成長に合わせて階段下の使い道を柔軟に変えられる点は、リビング階段を採用する大きなメリットです。
事例3.まっすぐに伸びるストレート階段が美しいリビング

グレーと木目を基調とした空間に、スケルトン階段のブラックが美しく映えるリビング。品よくコーディネートされたお部屋は、まるで高級ホテルを思わせる雰囲気です。
階段下に並べられた観葉植物たちもいいアクセントになっています。
事例4.人の気配を感じさせないリビング階段

リビング階段は採用したい。でもプライバシーも確保したい。そんな方にはU字やL字の階段で両サイドを壁にする間取りがおすすめです。
この形状であれば、上下階で違いの気配を感じにくく、かつリビングを中心に各部屋へスムーズに移動できます。奥まった部分は薄いカラーで配色すると圧迫感も軽減できますよ。
事例5.プライバシー確保にぽってりカーテンが大活躍
プライバシーに不安があるなら、階段は思い切って隠してしまうのも一つのアイデアです。こちらの事例は、リビング階段にシフォンカーテンを設置することで上下階の繋がりをうまく区別しています。
透け感があるので圧迫感が少なく、それでいてプライバシーも確保できる見事なコーディネートです。(引用元:@___ym.ie02|Instagram)
リビング階段で後悔しないためには?4つのポイント

リビング階段のあるマイホーム計画では、失敗や後悔を防ぐために次の4つのポイントを意識しましょう。
- 階段のレイアウト&形状
- プライバシーの確保
- エアコンの設置場所
- 水回り
ここからはそれぞれのポイントを詳しく解説します。
1.階段のレイアウト&形状
リビング階段のある間取りでは、階段をどこに設置するかが重要なポイントです。
階段のレイアウトは、生活動線と機能性に大きく影響します。水回りや想定される家具の配置を考慮し、日常生活に支障の出ないレイアウトを考える必要があります。
階段の形状については、空間の見せ方を左右する要素の一つです。スケルトンにするのか壁で挟むのか、はたまたストレートにするのかU字やL字にするのかでも、リビングの雰囲気は大きく変わります。
高齢者や体に不自由のある家族がいる場合は、使用感に直結する階段の幅や段の高さもじっくりと検討しましょう。
2.プライバシーの確保
リビング階段には開放的で洗練された印象を与えるメリットがある一方で、家族個人のプライバシーを確保することが大きな課題となります。
リビングから2階の廊下までがひと繋ぎの空間になると、個室にドアがあるとはいえ上下階で互いの気配を感じてしまうことがあるかもしれません。
プライベートな空間を保つには、階段をU字やL字するなどの方法が有効です。間取り次第ではカーテンやロールスクリーンを設置するのもいいでしょう。
リビングの中心と2階の各個室から互いを干渉しない間取りを意識してみてください。
3.エアコンの設置場所
リビング階段の注意点として寒さ対策の説明をしましたが、空調効率を考慮するならばエアコンの設置場所も重要なポイントです。
冷たい空気は下に、あたたかい空気は上に向かってながれる性質があるため、上下階がつながった空間では2階よりも1階の方が涼しくなる傾向にあります。
住まいの中心かつ家族が集まるリビングには、快適性を保つために冷暖房器具の設置が必須です。一年を通してリビングの室温が快適に保てるよう、間取りを決める段階でエアコンの設置場所も慎重に決める必要があります。
リビング階段と吹き抜けを組み合わせた間取りでは、対応畳数が大きめのエアコンやシーリングファンを設置することも選択肢になります。広いリビングでは、エアコンを2台設置して空気の流れを分散する方法も効果的です。
4.水回り
リビング階段の設計を進める上で、頭を悩ませるのが水回りの場所です。
キッチンの位置はもちろんですが、お風呂やトイレなどは使う人のプライバシーにも配慮しなければなりません。生活動線や家事効率ばかり意識してしまうと、音やニオイなどの問題をつい忘れがちになってしまいます。
断音や防湿対策という意味でも、リビング階段のある家づくりでは階段と水回りはある程度の距離が保たれた間取りにすることをおすすめします。
リビング階段は現代人の暮らしに最適!デメリットを解消して素敵な家づくりを

リビング階段はデザイン性や家族間のコミュニケーション、生活動線などの面でさまざまなメリットをもたらします。
ライフスタイルに合う間取りであれば機能性や快適性が向上し、日々の暮らしを豊かなものにしてくれます。寒さ対策やプライバシーなどデメリットとなりうる要素もありますが、生活のイメージをしっかり持てば失敗や後悔を防ぐことが可能です。
本記事でご紹介したポイントや事例を参考に、リビング階段のある素敵な住まいを完成させてください。